太陽 The Sun
アレキサンドロ・ソクーロフの『太陽』を観た。素晴らしい、映画らしい映画であった。
『太陽』は昭和天皇の人間宣言を描いた映画で、海外では結構前に公開されていたはずなんだけど、日本では公開されないのではと言われていた。やっぱり天皇とか扱うとかなり微妙になるからね。ところが公開されて、しかもヒットして拡大ロードショーになったってのがすごい。
最初は「相変わらず眠い映画撮るなあ」と思っていたんだけど、中盤前からがぜん面白くなって最後まで一気に見ることができた。全体に流れるのは恐ろしい長回しによるゆっくりとした時間なんだけど、異常な緊張感が何故かある。これはすごいことだ。普通じゃない。画作りも「普通こんなことしないだろ」ってのの連続なんだけど、ものすごいかっこいい。更にカット繋ぎも明らかにおかしいんだけど、なんだかすごい。画の質感は退色した様な独特のピントがぼけた質感で、さらに最近の映画ではありえないくらい画面が暗い。真っ暗。すごい。
音楽もがとんど入ってないってのもすごい。謎のノイズみたいな音が入ってきたりもするんだけど、基本は服が擦れる音さえも聞こえてきそうなくらい静か。これがまた緊張感を生んでる。
出演者ではやはり天皇役のイッセー尾形が素晴らしい。演技何だか素なんだか分からない演技なんだけど、ソクーロフの作り出す世界と絶妙にマッチしていた。いつものイッセー尾形と言えばそうなんだけどね。昭和天皇の口癖であった「あっそう」も連発してくれて、しかもそのタイミングが我々のタイミングと全く違って面白い。口をモグモグする癖も非常に良い。
皇后役の桃井かおりは最後の方にちらりと出てくるだけなんだけど、いい縁起してる。
この映画はべた褒めしてもいいんじゃないか。重厚な緊張感が漂う、今はあまり見かけなくなった素晴らしい映画だ。お勧め。
ちなみにポスターもかっこよかった、構成主義みたいで。(公式WEBサイトのトップページのグラフィック)
